ココロトタマシイ
「…ぇ……よ…」


誰かが、呼んでる…?



♪~


この曲、聞いたことある。



ていうかいつも聞いてるような……。


「おい!!」


大きな声と、体が大きく傾いたので一気に目が覚めた。

倒れかけた体を起こして、ふと前を見ると。


「み、南…くん?」


「やっと起きたか。電車、行っちゃうよ」


呆れ顔をした彼は、私にそう伝えると電車へ向かった。


「え?ええ?!
み、なみくん…待って待って!!」


まだ覚めきってない頭を必死に覚まさせながら。

私も電車に飛び乗った。

それと同時に閉まるドアに安堵の息を吐くと。

いつの間にか座っている南くんの前に立つ。

軽く俯いて、目を伏せているけど。

寝てはいないだろう。

そう思って少し明るめに声をかけた。


「起こしてくれてありがとね!
おかげで助かったよ~」


「…………別に」


ちらりと目だけを上げて無愛想に一言だけ答えると、再び目を伏せてしまった。


私、何か嫌われるようなことしたかな?

でも今まで全然話したこともないのに嫌われるわけ…――。

あ…そういえば、昨日が初対面だ。

私は知ってたけど南くんは知らなかったわけだから…。

もしかしたら、私に対する南くんのイメージあんま良くないかも……。


一人でそんなことを考えながら吊革を弾いていると。


「…降りるよ」


ぽそりと言って、突然立ち上がった彼に。

えっ、と思う間もなく腕を掴まれて、私は電車を降りた。


とりあえず、改札をくぐって外に出てみると。

なんだか駅の様子がいつもと違う。

目の前にあるはずのコンビニも、バス停もない。

それにT字なのは一緒でも、坂道ではなかったはず。


「ここ、どこ……?」


「南新崎」


つい口から零れた私の呟きに、南くんが答えた言葉。

にししんざき…。


「嘘、一駅乗り過ごしちゃったの?」


「そうみたいだね」


「そうみたい、って…あ、待ってよ!どこ行くの?!」


焦っている私をよそに、彼は何も言わずに歩きだしてしまった。


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