ココロトタマシイ

……………。

…………………。


いきなり何を言い出すかと思えば…。


「そりゃあ、僕も人間だしね。いつかは死ぬさ」


呆れたように言った僕の言葉に、彼はゆっくりと首を振る。


「これを見てみなよ」


「…何これ」


目の前に現れたのは、ずらっと並んだ数列。


526,752/34,689,600


一体何の数字なのか。

皆目見当もつかない。


「お前の寿命だよ」


「寿命?」


「そう。
右の数字が“本来の寿命”左の数字が“運命の寿命”」


“本来の寿命”に“運命の寿命”?

なんだ…――。


「なんだ、どっちも寿命なのか。
何がどう違うんだ?

って顔だな」


「………」


図星だろ?と得意気に笑う彼は、なぜかすごく殴りたくなる。

きっとこの爽やかな笑顔がむかつくんだ。


「…で?違いは?」


わざと大きなため息をついて、先を促せば。

彼は右と左の数字を交互に指差して言った。


「本来の寿命はそのまんま。
お前が本来生きるべき寿命さ。

運命の寿命は…。
このままいくと、この寿命までしか生きられないってこと」


「…………」


「つまり……――。
このままいくと、お前の寿命は『1年と19時間12分』てことさ」


1年と19時間12分…。

今、6月12日22時30分だから……。


「僕が生きられるのは来年の6月12日17時42分まで。
ってこと?」


「そういうこと」


「へぇ…」


「へぇ…って他に言うことないのかい?」


普通の人なら衝撃的な事実を前に、あまりに無関心な反応を示した僕を不思議に思ったのか。

彼は少し驚いたように首を傾げた。


「他にって?
それが僕の運命なんだろ?他にどうしろって言うのさ」


「ふーん、人間のくせに随分さっぱりしてるんだな。
普通、
『まだ死にたくない、どうすればいいか教えてくれ!』
くらい言うもんじゃないのか?」

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