ココロトタマシイ
少し苛つきながら気配のする所を睨み付けると。

一瞬跳ねて、ようやく姿を現した。


控えめに、おずおずとこちらに近付いて来たのは。


「あんた…さっきの」


さっきいきなり呼び止めてきた同じ高校の女だった。


肩くらいまでに伸びた金色の髪と。

まっすぐで綺麗な紺碧の瞳。

あと、あまりにもしつこかったから覚えてる。


「何、あんたまだ僕に何かあるわけ?」


冷ややかな睨みをきかせながら声のトーンを下げる。

一体何なんだよ…。

こっそりと小さく息を吐いて。

彼女の言葉を待つ。


「た、たまたまだよ。ちょっと遠回りして帰ろうと思っただけ」


彼女は勢いよく首を振って困ったように笑った。

嘘はついてないみたいだ。


これからこいつをどうしようか……。

さっきのを見られた以上、返すわけには………。


ふと視線に気づいて、いつの間にか下がっていた顔をあげると。

当の本人は、僕の首にぶら下がっているペンダントをじっと見つめていた。


「何、これがどうかした?」


片手でペンダントを持ち上げながら言うと。

彼女は、はっとしたように顔を上げた。

そしてまた勢いよく首を振ると「なんでもない」と両手を顔の前で振った。


「ふぅん……」


何でもないようには見えないけど。

と思ったけど。

いちいち問い詰めるのもめんどくさいし、ながすことにした。

適当に相づちを打ちながらペンダントに上着が被さるようにしまう。


♪~


それと同時に18時を知らせる音楽が鳴り響いた。


「あ…」


小さく発せられた声に誘われて、彼女の視線の先を辿ると。


紅く燃える空に真っ赤に輝く……。


「夕日………」


久しぶりに見た気がする。

昔は、よく見てたけど……。


“…い……ちゃん”

「………由希………」


「え?」


小さく呟いた言葉は、彼女には聞き取りにくかったらしく。

きょとんとした顔を僕に向ける。


「なに?」


「…何でもないよ。独り言」


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