ココロトタマシイ

見えない力-美麗Side-


――……変な夢をみた。

小さい男の子と女の子が手を繋いで歩いている。

二人の色素の薄い髪が、この薄暗い空間の中で淡く光を放っているように見える。

おそらく二人は兄妹で、男の子はいくらか傷を負っていた。


『おにいちゃん。ほっぺ、いたい?』


心配そうに尋ねる女の子と。


『……だいじょうぶだよ』


繋いでない方の手で、女の子の頭を優しく、ぽんぽん、となでる男の子。


二人からは、不安と微かな安堵が感じられた。


《もうこいつを危ないめにはあわせない…》


《これで、もうおにいちゃん。いたくないかな…》


聞こえてくる二人の声。

お互いに相手のことを想ってる。

そんな仲の良い兄妹が向かう先は……――。


底知れず深い闇。


止めようと手を伸ばした瞬間。

…目が覚めた。


「変な夢だったな」


起きた時に空を切った手を見つめる。

あの後二人は、どうなったんだろう…。

私は、あの男の子を知っている……。

………ような気がする。


手を何度も握ったり広げたり、ぼーっとそれを繰り返していると。

頭にこつん、と何かが当たった衝撃で我にかえった。

それに勢いよく振り向くと、肩に鞄を乗せて、腰に手を当てた呆れ顔のお兄ちゃんの姿があった。


「お兄ちゃん!何するのよいきなり!」


「美麗が玄関なんかでぼーっとしてるからだろ?遅刻しても知らねーぞ」


「えっ…嘘っ!!もうそんな時間?!」


慌てて携帯で時間を確認すると、ちょうど7時22分に変わったとこだった。

やばい!!

29分の電車に乗らなきゃ次の電車に間に合わない。

でも家から駅まではチャリをどんなにとばしても10分はかかる。

かくなる上は…。


「お、お兄ちゃん?」


「……今日の当番、全部お前な」


にやりと笑ながらヘルメットを投げるお兄ちゃん。

私も渋々頷くと、鞄を持ってヘルメットを被る。

携帯を見れば時計は既に25分になっていた。


「!!お、お兄ちゃん!早く!!!」


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