生徒だけど寮母やります!⁑






土曜日

景は学校の敷地に隣接する自宅へと来ていた


彼女がソファで新聞を広げながらお茶をすする父の正面に立つと、父がチラリとこちらを見て「ん?」と首をかしげる


「ねぇ、話があるんだけど」

「うん?」


真剣な顔の景に、父がキョトンとしながら話を促すと、景は少し緊張を含みながらしゃべり出した


「あのね、パパ。実は、一年一組の市河君を、男子寮Bに招待したいの」

「ほう?」

「彼、何も悪いことはしていないのに、私たちのためにヤナオカ先輩から恨みを買っちゃって……。寮の部屋が隣接してるだけにきっとつらい思いをしてるんじゃないかって。だからもし、彼と、男子寮Bのみんなが良ければだけど、市河君を男子寮Bに招待したい。ダメだったら諦める」


景はここまで言ってゴクリと唾を飲みこんだ


景とライの考えでいくと、男子寮Bのメンバー構成にはどうやら意図的なものがあり、結斗のように大手企業の後継者だったりと、それぞれが事情を抱えていることになる


長らく一緒に生活していく中で景は女の勘として、咲夜や爽馬も何か重要なことを隠しているのではないかと思うようになった

自分の考えすぎかもしれないが……



とはいえ、そもそも男子寮Bは男子寮Aの定員がオーバーしなければ作られなかったわけだから、これは都合が良いと、軽い気持ちでそんな生徒を集めただけかもしれないが


だから今回の件、もちろん第一は市河を助けたいという思いだが、景は今回のこのお願いでそのところを探ってみたかった



< 232 / 388 >

この作品をシェア

pagetop