生徒だけど寮母やります!⁑




よほど忙しいのか市河の母は駆け足で去って行き、途中振り向いて「お姉ちゃんたち来てるからね」と最後にもう一度笑顔を見せた


このわずかな間に彼女から滲み出る優しさを感じ、景は思わずうっとりしながら市河の母の背中を見つめる


そんな景に市河は苦笑いで家に入るように促した


「まぁ......裏口からで申し訳ないけど入ってよ」

そう言って先ほど市河の母が出てきた扉を開ける



3人は顔を見合わせると、白い色にもかかわらず鮮やかに咲くクチナシの花の横を通って「お邪魔します」と中へ入った


「それにしても本当に素敵なお家だね......なんか京都に来たみたい」


深みのある冷たい木目の床に、どこか懐かしい香りを感じる


靴を脱ぎながら目を輝かせてそう言う景に、結斗も同感した


「俺たち魔術科にはあまり日本家屋って縁がないから、凄く新鮮だよね」

「そうなんだよね!爽馬もこんな家に住んでたの?」

「まぁ......でもこんな立派な神社じゃない」


市河にとってはなんら普通の自分の家であるわけだが、こうも喜んでもらえるとなると嬉しいやら恥ずかしいやら変な気持ちになって素顔に礼を言った


「......ありがと........まぁ......喜んでもらえて嬉しいけど」


そして自分も靴を脱ぎながら扉を閉めると、どこからか足音が近づいて来て、市河は表情を変えず目線を動かした


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