詐欺師の恋
と、思っていたら。



中堀さんの身体から力がふっと抜けて、私に覆いかぶさる。






「わわっ…」






鳴り止まない心臓の音が聞こえてしまう!と一瞬不安になったが、中堀さんはもうすっかり意識がないようで、すーすーと規則正しい寝息がする。






「……な、なんなのよぅ。」





ばっくんばっくんする胸に、知らん振りしながら、中堀さんをソファにきちんと横にならせた。




はぁぁぁぁ、と大きく溜め息を吐いて、ソファの横にぺたんと座り込む。






きれいなその寝顔を、ぼーっとする意識のまま見つめた。








額に触れた唇と。





頬を滑る指の感触が。




中堀さんの熱を移していったせいで、はっきりと残っている。





ただ、おでこにキスされただけなのに。





不意打ちのキスが。




今までのどんなキスよりも。




私の胸を震えさせて仕方ない。





無防備で、少年のような中堀さんの濡れた瞳が、想いを煽る。





これが。





出逢ってから初めての。




意味のある、キスのような気がして。





中堀さんの、本当の姿を、初めて垣間見たような気がして。

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