詐欺師の恋

「もう少し…ここに、居て…」




小さく零れた言葉は、目の前の中堀さんを、ひどく幼く見せた。




私が中堀さんを見つめたまま何も言えずに居ると、手首を掴んでいた熱い手が放され、ゆっくりと私の前髪に触れる。




ふわりとした感触に、髪を掬われたのだとわかる。




―な、何をするんだろう。




頭が真っ白になりそう。




息の仕方を忘れた私をよそに、中堀さんは、その手をそっと脇にずらすと、少し身体を屈ませた。




そして。



露わになった私の額に。




しっとりと。




中堀さんの唇が、触れる。




髪を分けていた中堀さんの。


指の背がゆっくりと下がって。



私の輪郭を確かめるようになぞっていく。





そして。




「っ」




最後に、私の唇を親指の腹で、そっと拭うように線を引いた。





「~~~~~~!!!」






もうだめ。


これ以上じっとしていられないよ。



心臓が口から出そう。







< 99 / 526 >

この作品をシェア

pagetop