詐欺師の恋
その時に、私なりに気を遣ってベットメイキングなるものをしてみたのだが。






案の定、上手くいかなかった。





下の方がピンとのばせず皺が寄ってしまった事に、面倒くささを感じた私は、いいやいっそ折りたたんじゃえと、カバーの端を折ってしまった。




それの痕跡が、残っている。



つまり。



寝室は、あの日のままだ。





中堀さんは、このベットで寝ていない。





あれから、一度も。




家の中も、引越しの片づけをして、少し残したまま。




養父の遺品たちもそのまま。





冷蔵庫の中身も、買ってきて入れたまま。




ミネラルウォーターだけ。




しかも、少しも減っていない。







「あれから、帰ってない…?」






一週間は経つ。




なんで?




私は首を傾げながら、毛布を手にくるくると巻きつけて持つと、一階に下りた。



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