詐欺師の恋
音を立てて起こしてしまわないように、そぉっとドアを開けてリビングに戻ると、さっきと変わらない体制で、ぐっすり眠っている中堀さん。




その身体を包むように毛布を掛けてあげてから、頭は冷やした方がいいかなと濡らしたタオルを額にのっけた。





「わかんないよ…」




ソファの端に頬杖を付きつつ、中堀さんに呟いた。







どうして、今日来て欲しいって言ったの?




なんで、熱が出るまで無理していたの?




どうして、家に帰らなかったの?





答えの出ない疑問は、疲れている身体には禁物だ。






私の瞼はあっさりと下がってくる。




ああ、駄目だ。




さすがに、眠い。




寝ずの看病を、と心のどこかで、一応は思っていた。





でも、少しだけなら仕方ないよね?





休んでも、良いよね?




ちょっとだけ。




だって、誰かのお陰で心臓が酷使されたんだから。





そのせいで、疲れたんだから。





少しだけ…




良いかな…
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