詐欺師の恋
「でも、付いて来たじゃん。」



「それはっ…車から降りれるわけないじゃないですかっ。」



「だけど、ちょっと楽しみそうだった。」



「そ、そんなこと…」




「家って聞いて、何想像したの?」



「なっ…~~~~~!!」




中堀さんは相変わらず美しい笑みを湛えて、パニくっている私を面白そうに見つめている。




「顔、赤いよ?やーらし」




「ちがっ、違います!」




「うん?何が?」



中堀さんに指摘されて、さらに顔が熱を持ったのがわかる。




「ひ、引越しの手伝いだって…ちゃんと思ってました…」




本当の事なんて、言えるわけない。



中堀さんにいっぱい触れるかもと思ってました、なんて。



敗北。



完敗だ。




あー、明日も仕事、なのに。




浮かれてた自分、さよなら。




がっくりと項垂れて、烏龍茶を飲んだ。
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