詐欺師の恋

御人好しなあの人だから。


野良で懐かない俺を、放っておけなかったんだろう。



太陽が居るから、空は青くなるけど。


太陽が居なかったら、星に頼るしかない。



だけど、空のせいで、太陽が陰るのは、駄目だよ。




太陽は空だけのためにあるんじゃない。



全ての命ある者の為にあるんだ。



だからさ。



俺と一緒になんかならない方がいいよ。




俺には、あの人の光は眩しすぎるから。






一緒になんか、暮らさない方がいいよ。



俺から、離れてた方が、あの人はもっと沢山の人の光になれる。






そんな風に考えて、開きかけた心は、固く閉じた。




そうやって、いつしか高校を卒業する頃から、燈真と手を組んだ。




自分の思い描いていた未来図なんか、何処にもなかった。





あの人が願うような、青い空になんか、なれなかった。





暗い中を、当ても無く歩いているような。





自分はそんな人間だから。





太陽から付けられた名前は、勿体無さ過ぎる。






人を騙しながら生きている自分の色は、あの人が言ったように、青く澄んでなんかいない。
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