詐欺師の恋
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『花音』



初めて、呼ばれた自分の名前。


大好きなその人の声を通して、空気を振るわせた、名前。


花音という名前で良かったと、心底思った。



大きくなるばかりの会場の騒めきよりも、心臓の音と、回された中堀さんの腕と、私の耳を掠める中堀さんの息の方が大きく感じた。


頭の中は、零という存在が、このカウントダウンライブで、しかもファンが沢山いる前で、私なんかに構っていて大丈夫なんだろうか!?とぼんやり思いつつも、中堀さんが自分の名前を受け入れることができたんだという事実の嬉しさが、ほとんどを占めていた。


大好きなその名前を呼べば。


回された手に力がぎゅっと籠もる。



中堀さんが、柔らかく笑った気配がした。


良かったな、本当に良かったなとぼろぼろ涙を流したのも束の間。





『俺…あんたのことが、好きなのかもしれない。』



その涙が引っ込む程の爆弾発言が、私の耳に届いた。
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