詐欺師の恋
『えええええええっっっ!?!』



余りに驚きすぎて、仰け反った。



『危ねぇ』



中堀さんのちょうど顎部分に当たりそうだったらしく、彼の腕の力が緩む。




『ってか、、うるさいよ』



目を飛び出してしまいそうな位見開いて振り返れば、中堀さんが痛そうに耳を塞いでいた。




『いやっ、だって…!だって!!!!』



『あのな、よーく聴けよ?好きとは言ってない。好き、かもしれないって言ったんだ』



中堀さんは、興奮気味の私の肩を掴むと、子供に言い聞かせるようにそう言った。



『は!?』




当たり前だけど、私の頭は混乱する。



だって。


かもしれないってどういうこと!?



それはもう、好きでいいんじゃないかな?!



『だから、勘違いするなよ?』



『え、その、ちょっと、理解が…』



『はいはーい!!そこまで!!』



中堀さんの意図をなんとか汲み取ろうと訊ねかけた所で、メリッサが割って入った。


それこそ、チョップで。


私の肩を掴む中堀さんの腕を切ったのだ。



そして。


『零、勝手なことされちゃ、困るわ。さっさと客とファンの子たちに愛想振り撒いてきなさい』



こそこそと中堀さんに耳打ちし。


『さ、行くわよ花音!!!』


何故か、今度はメリッサが私と肩を組んで、半強制的に退場させられた。



この時に、初めて、会場の普段は黄色い声の主達が。



『何あのブス!』


『やだー。でもきっとまたすぐ駄目になるわよ。』


『零の悪い癖よ』



どす黒い言葉を吐いていたのを、拾った。




中堀さん。


人気者の自覚を持ってください。
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