詐欺師の恋
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炭の匂いと、煙。




食欲のそそる匂いも、今の私には無意味だ。





久しぶりに来た、居酒屋『都筑』にて、私は目の前の焼き鳥をぼんやりと眺めた。







「花音、、そんなんじゃ、痩せるよ?」





向かいに座る憲子が、心配そうに私を覗き込む。







「…うん、、、」





私の反応に、だめだこりゃ、と呟いてから、憲子は座敷の壁にもたれかかった。





「あの、さー…」





憲子はビール片手に、どこか遠くを見ながら、言いづらそうに口を開く。






「ん…?」




「ちょっと、訊きたいんだけど、さ…」





私はそれを、食べる気もない焼き鳥をいじりながら、聞く。





「藤代と、何かあった?」




「・・・・・・」





がやがやと、周囲の音だけ、暫く続いた。





「…こないだ、花音が会社で倒れた時―、真っ先に、『俺が送ります』って言ったの、アイツだったよ。私だって居たのに強引な奴だったわ。」





「・・・・・・」





「…今まで淡白な付き合いだったじゃない。なんで急に?」






藤代くんに告白されたことは、憲子には何故か言い出せないでいた。





なんとなく、忙しかったこともあって、中堀さんとのこともあって、そこまで考えられなかったというのも理由の一つだが。




再び、私達の間に沈黙が流れる。




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