詐欺師の恋
『開けて、寒い』




耳にあてた携帯から聞こえる声。


既に中堀さんは階段を上ろうとしている。



「~~だ、だめだめだめです、ちょっと!ちょっと待ってくださいっ!!!」




勢いよく窓を閉めると私は部屋を見回した。



昨夜憲子が来たから、部屋はある程度綺麗。



でもでも、わかんない。




とりあえず空気入れ替えて、乾かなかった洗濯物をお風呂場に…と、待って、私シャワー浴びたい、せめて顔なんとかしたい。


というわけで、洗濯物はクローゼットに詰め込んで。




どうしていつも中堀さんは、神出鬼没なのよっ!



心の中で八つ当たりつつも、ドキドキする心臓は、急いでいるせいか、それとも来客に対するものか。




答えはわかりきっている。




結局家に行って手伝って帰ったあの日から、連絡をくれると言った中堀さんの約束は果たされていなかった。



突然とはいえ、かなりサプライズとはいえ、嬉しくないわけがなかった。



馬鹿で結構。


顔がにやけます。

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