詐欺師の恋
だけど。


インターホンの連打は彼の得意技で。


どれがいいかしらと、服を選んでいる余裕もなく。



かわいくないスウェットから、かわいくないジーンズとシャツに着替えるのが精一杯だった。




「少し待っててくんないかな?!」




つい文句が口をついて出る。




そして、髪を慌てて纏めあげてバレッタで挟むと、軽く化粧をして、パタパタと玄関へ駆けつける。





「はいはいはい!」




ガチャ





「遅い、寒い」





開けると、案の定中堀さんが、じとっと恨めしそうな目で私を見ていた。





「突然すぎるんです!」




頬を膨らませて抗議するが。






「…何にやけてんの…こういうプレイが好きなの?気持ち悪。」





「!」




頬、膨らんでないらしい。




しかも女子に向かって、なんてひどいことをさらりと言うんだ。





でも。



寒がる中堀さんがちょっとかわいかったから、、、なんて口が裂けても言いません。
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