詐欺師の恋
そんな私の脇を通り過ぎ、部屋にスタスタと上がる中堀さん。




私もにやにやを掌で隠し、後に続く。




「あのー…突然どうしたんですか?今日、何か用事だったんですか?あ、何か飲みます?」





忠犬のように中堀さんに纏わりつく私。




「…?中堀さん?」




中堀さんは私に背を向けたまま、居間に入る手前の廊下に無言で立ち止まった。





「あれ、そんなに寒かったですか?どこか具合悪いですか?」





外で待たせすぎたかと心配になる。




やがて、はぁと中堀さんが溜め息を吐いた。






「…あれ、プリントアウトしたの?」





ちらっと私を振り返って、予想だにしない台詞を吐く中堀さん。





「な?!何が、ですか?」






ちょっと憂いを帯びた中堀さんの目が、心音を加速させる。





「…こないだの、俺が撮った奴、だよね?」





ま、まずかったろうか。




デジカメのデータの中に入っていた、親子の写真がなんだかとってもよく撮れていて、つい印刷して写真立てに飾ってしまった私。



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