詐欺師の恋
「空生が後悔しないように、最後の忠告。俺ならではのとっておき情報。」






「はいはい」







気のない返事をして、車に乗り込もうと、俺は崇の脇を通り抜ける。





西日が、眩しくて、思わず目を細めた。



















「カノンちゃん、結婚しちゃうらしいよ?」











「――――」







ドアに掛けた手が、止まった。







「なんでも、カノンちゃんのおばあちゃんってのが、相当な金持ちらしくてね?結婚相手を勝手に決めて、無理矢理お見合いさせるみたいだぜ。」






青い香りを連れて、吹く風。




それ以外は、全て静止したように、感じた。




呆然としている俺に、崇が首を傾げて見せる。






「空生は、それでいいわけ?」












いつも。







絡みつくしがらみや、障壁を臆することなく飛び越えてきてしまう、アルバトロス。





それは、まだ近くにいるのか、それとも遠くなったのか。





この手は、まだ、届くのか。
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