詐欺師の恋

私の中で、何かが切れた音がする。



「違いますっ!誰かのせいで睡眠不足に祟られてですねっ、こう、すっかりイベントというものを忘れていたんですよっ!」



さっきの恋する乙女はもう居ない。



《それだけ元気なら大丈夫だな》




中堀さんの悪戯っぽい笑みが、頭に浮かぶようだ。




「ちょっと!?話がズレてますよ!?問題はあの日のことなのにっ!!」




《悪い。そろそろ俺出番だから》




「なっ!?」



気持ち良いほどに、すっぱりと切られた通話。



口を開けたまま、信じられないものでも見るかのような目つきで、持っている携帯を見つめる。





「きー!!どこがっ、弱いのよ!」




悔しくてもう通じない携帯に向かって、叫ぶ。




クリスマスとか、イベント時は、クラブは忙しい筈だから。



もしかしたら、仕事の始めをずらしてくれたりしたのかな、なんて思うとすごく残念な気持ちになる。



大晦日のカウントダウンだってあるんだろうし。




「はぁーー」



自分の不甲斐なさ。自己嫌悪。



大きな溜め息と共にその場に座り込んだ。
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