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その夜、また朝みたいなことが起こらないか不安で瞼を閉じられずにいた。

それどころか涙が溢れて止まらない…

今の時間ならきっと誰にもバレないと、声を押し殺して泣いた。

何であたしだけこんな辛い思いしなきゃいけないの?

他の子と同じように生活したいって望むことはいけないことなの?

そう思っていた時

「…絹香ちゃーん …!? 絹、どうした?」

タイミングが悪い、いや悪すぎる。

ノックもしないで寝起きドッキリでもしようとしていたのか。

入ってきたのはやはり長男だった…

「目、真っ赤だよ」

だって泣いてたんだもん。見たら分かるじゃない!

「耐えきれなかったの。もう無理だよ…」

「絹?」

「頑張ってたんだよ!みんなの前では“明るい絹香”でいるって決めてたのに…!」

不安と恐怖に押しつぶされそうで、甲ちゃんにもつい感情をぶつけてしまう。

こんなこと言うつもりじゃないのに…

これじゃあ、ただの八つ当たりと変わらない。

「気付いていたよ。絹が弱音はかないのも、いろんなことを我慢していたのも」

ベッドサイドの椅子に腰掛け、甲ちゃんは静かに言葉を紡ぐ。

「泣いたっていいじゃん。乾いた心を潤してあげるのも時には必要だよ」

今日は泣きすぎちゃって潤いどころか大洪水なのに…
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