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「ヒト」は様々な知識を蓄え、技術を身につけ、自らの生活を豊かなものへと進化させてきた。

それはとても目覚しい発展だが、“精神的”な面はどうだろう。

喜び、楽しみはまだしも 悲しみや怒りを完璧に制御できるような発明は成されていない。

“個性”だの“人間らしさ”だのが失くなると言えば、それまでだが、ヒトはそんなに強い生き物ではない。

その日の彼もそれは例外ではなかった。





まるでブラックホールに突き落とされでもしたかのような気分だった。

どれだけの時間が経ったのか、今 目にしている現実は夢か現か。

思考が正常に働かない。

ただ 分かるのは手首が鈍い痛みを伴いながら 血で赤く染まっていること…

大切な人を失った悲しみは再び彼を深く傷つけ、極限まで追い込んでいた。

医師達は必死に処置に当たったが、その反面で少年は薄れゆく意識の中 「このまま消えてしまいたい」とさえ強く願っていた。
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