奥様のお仕事
休む暇もなく島からの船を下りると
タクシーで空港へ向かった。


初めて見る風景にドキドキした。
建物も車もたくさんで 私は今まで
どこで暮らしていたんだろうと思うくらい


勇気がなくて 島から出られなかった。
もしあの時 友達と島を出ていたら
私もこの街で暮らして いろんな経験をしたんだろう。


「長谷……あ…
こ……浩一郎……」呼びづらい 
恥ずかしくて 頬が熱くなった。


自分よりはるかに年上の人をそれも
祖父の仕事相手の人を なぜか 呼び捨てで呼ぶと言う
私の仕事っていったいなんだろう。


空港へついて 前もって 浩一郎に言われていた
大切なものだけスーツケースにいれなさいと
二日の猶予をもらって 私は祖父が作ってくれたアルバムを数冊と
思い出の品 
後は 言われた通り 何も持たずに スーツケース一つだけ持って出てきた。


手慣れた様子の浩一郎の背中を見失わないように
必死について歩く。
ちゃんと見てないと 見たことないくらいの人混みに
姿を見失ってしまうから・・・・・・。
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