奥様のお仕事
「むこうは寒いから」

そう言うと 私に 厚手のパーカーを持たせた。


「祖父の思い出の土地なんです。
いつか祖父に案内してもらいたかったのに」


新千歳空港行


「雪降ってるんですか?」


「うん。寒いよ。こっちとは全然違うから覚悟して」


浩一郎は 優しく微笑んだ。


「むこうに行ったら 迎えが来てるからそれまで風邪ひかないでね」


何から何まで気にかけてくれる 大人の男性
スーツ姿が とても素敵だった。


周りから見たら 私たちいったい 
どんな関係に見えるのかな


同僚?それとも 恋人?
え?それとも 夫婦?


バカみたい 
アホみたいな空想をする自分がおかしかった。


「楽しそうだね」
浩一郎が微笑んだ。


「今まで 島を出る勇気がなくて・・・・・・
なのに 私これからもっと遠くに行くだなって」

慌てて言葉を並べた。


「ここを出たらもう 今までの 臆病なマリンではないよ」


浩一郎が 私のことを マリンと呼んだ。
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