奥様のお仕事
エレベーターが閉まると 

「なかなかだったよ」
浩一郎が言った。


「ちょっとシナリオから外れたけど
これから先の展開が楽しみになる方向になった」


「うちのじいちゃんのこと
知ってるんですか?」


「フフフ………いつか本人に聞いてみて」


「え?聞けます?」


「マリンなら聞けるなって確信したよ
頼もしかったな」


「腹立ったんです。
祖父のことバカにしたようなこと言って」


「悪いね
あの人ああいう言い方する人なんだよね
悪い人間じゃないんだけど ああやって生きてきた人って
人の痛みなんかわかろうともしないから
失礼なこと言って悪かったね」


扉が開いて 玄関の広いホールが視界に広がった。



「俺のこと幸せにしてくれるって
頼もしかったな」


「え?そ それは・・・・・・」


売り言葉に買い言葉


「あったまにきたから」


「マリンが幸せにしてくれるんだ」


「お仕事の流れです」


まだつながっていた手を慌てて払った。



「からかわないでください
私も必死だったんですから」


「それでいいよ。マリンは賢いからね
思うままやって」

浩一郎が ニッコリ微笑んで 私の頭を撫ぜた。
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