西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
「夏以外は、ここ、人がいないんだ。だから、母さんも、俺たちも、静かに過ごせた」

 電車で、お弁当を持って海へ行ったと話していた事を思い出す。

 それはきっと、私が想像していた賑やかなものではなくて、悲しい思い出なんだろうと思った。

「………そう………」

 私も、砂を集めて山にする。

 ついこの間まで、照りつける太陽の下、多くの人がその中で楽しんでいた海の水は、もう秋の温度だった。

 砂をすくった手に、刺すような冷たさが走る。

 思わず短く悲鳴をあげると、永峯君が笑った。

「大丈夫?」

「……あんまり大丈夫じゃないかも」

 そう返して、私はまた、砂をすくって山に積む。

「でも、私もお城、作りたい」

「じゃあ、どっちが上手に出来るか、競争しようか」

 赤く腫れた目で、チワワは子どものようにまた笑った。

 頷いて、冷たい砂に躊躇せず、私もお城を築く。
 
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