この気持ちをあなたに伝えたい
初めて話すこと
「・・・・・・お前さ、どうしてそんなに俺を頼ろうとしないんだ?」

 礼雅に会って、すぐに質問をされた。この質問は礼雅が前に何度か最愛にした。

「自分でできることは自分でしないといけないから」
「俺だけじゃないよな? 頼らないのは・・・・・・」

 大学生になってからの最愛を見ていて、気づいたことがある。
 最愛に何かをしようとしたとき、それを嫌がり、自分でこなそうとする。昔の最愛は謝りつつ、人の好意に甘えていた。
 ただの強がりに見えなかった。何か思い荷物を持っているときに手伝おうとしても、最愛は断る。ストーカーの件で疑いが晴れた後も一人で解決しようとしていた。
 
「頼ってばかりだと人は成長できないからな」
「言うことは立派だな」

 棘のある言い方をされて、最愛は眉間に皺を寄せる。

「高校一年生くらいか。お前がここに来なくなったのは・・・・・・」
「何だ? 急に・・・・・・」
「中学生のときまではそんなことがなかった。だけど今は何でも自分でやろうとする」

 人の好意に甘えないで、邪魔者扱いしていることを言われ、最愛は反論する。
 最愛はどうして自分がこうなったのかわかっている。
 だけど、それを誰にも教えるつもりはない。知らなくていい、知る必要なんてない。

「私は・・・・・・周りに迷惑をかけるのが嫌なんだ!」
「俺は迷惑だと思っていない」
「何でも頼る人間になりたくない。さっきも言わなかったか?」

 同じことを何度も繰り返していても仕方がない。

「お前が頑張ることを否定していないんだ。ただ、甘えたっていい・・・・・・」
「そんなこと、無理だ・・・・・・」

 誰かに頼るなんてこと、最愛にはできない。

「どうしてだ?」
「もう私のことは放っておいてくれ!」
「最愛!」

 最愛は彼の顔を見ず、そのまま走り去った。
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