この気持ちをあなたに伝えたい
「また賭けをする気になったのか?」
「そうじゃねぇよ。でも、賭けのおかげで随分儲かったぜ」

 餌打は嬉しそうに財布をポケットから出して、眺めている。

「お前もひどいよな。遊ぶために苗村を利用して、金稼ぎなんてさ・・・・・・」
「本当はもう少し稼ぐつもりだったけれど、やめたんだ。目的は達成されて、そこそこ金が手に入ったしな・・・・・・」

 最初から美鈴のことを好きじゃない、利用するためだけに近づいたことを彼に言われて、目の前が真っ暗になった美鈴は倒れそうになった。
 情報室の前に美鈴がいることも知らずに餌打達は笑いながら話をしている。

「賭けを中断したのは名波と付き合うようになったからか?」
「違う・・・・・・」

 最愛が自分の彼女でないことを告げると、一人の男子が喜んだ。 
 話が脱線していることに気づいたようで、美鈴の話に戻した。

「それで? 苗村に悩まされている理由は何なんだよ?」
「あいつがさ、しつこいんだよ」

 餌打が鬱陶しそうに言っても、他の男子達は羨ましがっている。

「性格を知ったら、泣くぞ・・・・・・」
「どうにかならねぇかな?」

 どうして餌打が自分に近づいたのか、これではっきりした。
 数ヶ月前に餌打が美鈴に近づいたのは彼女が自分にとって、得する存在だったから。高校一年生のときに平穏な日々が続いて、何か面白いことはないか、考えていたときに同じクラスだった美鈴を賭けで利用することにした。告白に成功したら、お金をもらい、三ヶ月以上交際を続けることができたら、倍の金額を餌打に渡す。女と遊ぶために金が必要だったので、美鈴を騙して、それに利用した。
 これ以上聞いていられなくて、美鈴はそのまま情報室から立ち去り、誰もいない教室で泣き崩れた。
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