この気持ちをあなたに伝えたい
　本棚の本を指で滑らせながら見ていくと、一巻が置いてあったので、そこから一巻を出して購入した。休日はレジの前で長蛇の列になっていることがよくある。
　だけど今日はそれほど人が並んでいなかった。購入後、近くに椅子があるので、そこへ座ってコミックを読んだ。内容を簡単に説明すると、主人公の女の子がある日異世界へ飛ばされて、そこに住んでいる人たちと仲良くしていく話。こういう話のコミックを読むことも悪くないと思いながら、他に面白いものはないかと店を出た。
　次の角を右に曲がると、目の前にはショッピングセンターがある。
　中に何度か入ったことがあるが、何かを購入したことはまだ一度だけだった。
　全体的に見るより、気になっていた店から順番に見ていくことにした。可愛らしい服をメインに売っている店にはぬいぐるみや小物が飾ってあって自然と足が止まる。
　どんなに持ち帰りたい衝動に駆られていても、これは売り物ではない。あと数十分見ていることができるが、やめておいて別の商品を見た。目に入ったものはカードケース。半年前までカードケースを持っていたけど、しばらく使っていると、すぐにカードを入れる部分が破けて使いものにならなくなったので捨てた。店に置いてあるカードケースは黒と白だった。黒を選んで値段を見たが、予想以上に高かった。
　最愛が持っているものは百円なのに対し、これは三千円近い値段だった。
　あちこち商品を見ても、可愛いが高いという理由がほぼ占めていて、何も買わなかった。
　店の外でティッシュ配りをしている女の子に近づくと、どこかで見たことがある顔ーー最も会いたくない相手である雛だった。
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