この気持ちをあなたに伝えたい
知らなかった一面
 どうしてこんなことになっているのかわからなくて、頭の中が混乱している。
 まだ恐怖は続いていて、終わっていなかった。ずっとストーカーに狙われていた。帰る時間をずらすことや帰り道を変えたりしたものの、どれも駄目だった。
 溜息を吐いていると、誰かに目隠しをされたので、手を振り払って逃げようとしたときに派手に転んだ。

「いっ!」
「大丈夫?」

 最愛は目の前の人物が怖くて、動けなくなった。

「や・・・・・・」
「顔を上げて?」

 最愛が頭を抱えて横に振ると、大きな手が膝を触ったので、恐る恐る顔を上げた。
 そこにいたのはストーカーじゃなく、礼雅だったことに安心し、今にも泣きそうな状態だった。

「やっと見たね。最愛ちゃん」
「・・・・・・礼雅お兄ちゃん?」
「そうだよ」

 礼雅は頷き、心配そうに最愛の膝を見た。

「どうしてここに?」
「最愛ちゃんのお母さんに頼まれたんだ」

 大学生になってから帰りが遅くなっているから、時間があるときは駅まで迎えに行くよう、母に頼まれたようだ。大学の時間割表をコピーして渡しておいたから、何時に大学へ行って、何時頃に帰るのかわかる。

「礼雅お兄ちゃんだって仕事があるのに・・・・・・」
「毎日は難しいけどね。それにしても最愛ちゃん・・・・・・」
「何?」

 顔を上げると、礼雅はさっきより心配そうな顔をしている。

「礼雅お兄ちゃん?」
「君は変わっていないね。この辺の薬局は閉まっているから、俺のとこまで行こうか」

 血を流している膝を見て渋い顔をした。足を動かすと、痛みで顔を顰めた。礼雅に両手を引っ張られてから、両足に手が回り、昔のようにおんぶされていた。
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