恋愛の神様

構内の注目を鷲掴んで俺に押し付けておいて、ひよ子はチョコマカと走り去ってしまった。

何の罰ゲームか。

呆れつつ近くにあった喫煙スペースに移動して煙草を吸う事十分―――きっかりにひよ子がパタパタと戻ってきた。


「ぶ、部長いなくなっちゃったのかと思いましたよぅ。これ、どうぞ。」


差し出されたのは手ごろな大きさの花束と百円傘。


「傘は分かるが……この花束は労いかなんかか?」

「誰が部長に差し上げると言いましたか。オクサンにですよ!お誕生日ですよ。」

「いや、だからなぁ……」


別居中だって言っただろーが。


「当然、会いに行かなければ、渡せません!おり姫とひこぼしだって一年に一回くらい会うのですから。部長、アニバーサリィーには疎そうだし、誕生日くらい出向かなくていつ行くんです?さあ行ってきてください。」


コイツ、突つけば泣きだすような見た目を裏切って、正論をズバッと刺してくる。

ま、そこが『買いドコロ』なんだが。

刺される立場としては、切実に手加減を要求す。


「そうはいったってオマエ、相手の都合もなく―――」

「大丈夫です!」


歯切れの悪い俺を叩くようにひよ子は毅然と胸を張った。



「何と言いましてもワタクシ、これでも恋愛の神様なんです!」


「…………………………。」


とうちゃんはオマエが心配だゾ?

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