恋愛の神様

草賀さんではない誰かの為に傷ついた我儘なワタクシを優しく抱きしめてくれて。


草賀さんがいなかったらワタクシ、どうなっていたんでしょうか。

自分の気持ちきも気づかないまま、無為に落ち込んで鬱積を抱えたまま生活したのでしょう。

少なくとも風邪を引いたのは確実です。

この人はとても優しい。

なんだかんだととてもお節介で、傷ついた人をほっとけないお人よしです。

こんな人とワタクシ今一緒にいるんですね。

今更ですが、これってすごい幸運な事じゃありませんか?

意識したら、胸の奥がジンワリ温かくなりました。

ソワソワと落ち着かない……でも決して嫌なカンジではありません。


「草賀さんがいてくれたから――――ワタクシは……大丈夫デス。」


くすぐったいような温かな気持ちを伝えるように命一杯の笑顔で言うと、草賀さんは「そか」と笑いました。


「ま、化粧が崩れて顔は全然ダイジョーブじゃねーけど。」

「ええっ!!」


やっぱり草賀さんは草賀さんのようです。

ゲラゲラ笑う草賀さんをヒドイと詰りながら、ワタクシはどこか幸せな心持でした。




胸の奥でひっそりと芽吹いた双葉が温かな風にふわふわと揺れるよう―――。







その時芽吹いた新芽の名をワタクシが知るのはもう少し後のことです。



< 144 / 353 >

この作品をシェア

pagetop