恋愛の神様

「あぁ、悪い。健気だなーと思ったら、つい……、な。」


あー……欲求不満も相当キテルよなあ

……無性に抱き潰したくなった。


「チィちゃん、今夜さ……」


言い差して先を呑みこむ。

正直、抱きたいのと寝たいのと五分。

寝るっつーのもこの場合、野山を抱っこしてぬくぬくしながら熟睡したいって事だが

……他の女ならいざ知らず、野山相手だと和んじゃうしなぁ、俺。

それでも俺はそれなりに至福なワケだけど、野山はそれじゃ不服だろ?

なんせ、肉体関係肯定派だし?


「あのぅ……」


次の言葉を躊躇っていると下から伺うような声。

視線を下げると、ちょっとだけ頬を染めた顔が期待一杯に身を乗り出して言った。


「今夜、よろしければお家に行っても宜しいですか?」


実際、これまで野山から積極的にこう言った誘いはなく、これは俺の考えを読み取って汲んでくれたか、と邪推する。

その沈黙を勘違いして野山は直ぐに萎れた。


「ぅ、スミマセン……図々しかったですね。」

「あ?や、そーじゃなく……」


俺は戸惑った挙句、どうせ野山相手に今更、と開き直った。
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