恋愛の神様


「放しなさいよ!!アンタが理由もなく私を避けるんだから、私だってスキにさせてもらうわよ!」


ヒステリックに叫んで、掴まれた手の上へ身を乗り出した。

唇が―――それこそ頭突きの様な勢いでぶつかった。

噛みつくような、キス?

…………や、単なる失敗。

だけど悠介をぎゃふんと言わせるには効果があったみたい。

フリーズしてしまった悠介からそっと唇を放す。


「スキ―――悠介の事がずっとスキだった。……だから襲いにきたのよ。」


反らされることなく向けられた瞳。

自分のセリフにジンと胸が震えて、目頭が熱くなる。

あーもー、やだ。
キャラじゃないのに………。

そう思ってる間にも熱いモノが目の縁に盛り上がって零れた。

あからさまに悠介はウロタエタ。


「言動が支離滅裂。つか、泣くなよ!」

「がうっ!滅裂なんかじゃないし!!」


私は駄々っ子みたいに喚いた。


「悠介の事がスキだったの!お化け屋敷っ……アンタは忘れちゃったかもしれないケド、悠介がいたから行くって言ったの!だけど、怪我させちゃって―――」


みんなとはぐれて廃屋で蹲っていたら悠介が見付けてくれた。

その時悠介は倒れた家具から私を庇ってくれて怪我をした。

だけど、そんな事一言も言わなくて、大好きなサッカーを休んでいる事で私はそれを知った。


ゴメンナサイとアリガトウ

…ちゃんと言わなきゃ。


そう思いつつ素直に言えなくて、気が付いた時には避けられていた。

きっとお礼一つ満足に言えない傲慢な女だって思われた。

そう思ったら益々意固地になって、言えなくなった。

< 182 / 353 >

この作品をシェア

pagetop