恋愛の神様

        犬飼亜子





※※※ako inukai※※※



縋りついていた温もりは、私の手から離れていった。

とうとう一度も振り返ることなく、レオが部屋を出て行った。


「ふ……………ふふふ」


湧きあがってきた笑いが零れた。

脱力して、机に寄りかかる。

鼻の奥をツキンと刺すものに私は天井を見上げた。

私に泣く権利なんてない。

レオにまで見限られると思ったら、惨めで自分が哀れで。

私からレオを奪うあの娘がとても憎らしくなった。

いいえ、憎らしかったのはあの娘だけじゃなくて、レオ本人も。

私の事を愛してると言って、虎徹くんの恋人だと知っていながら私を唆した男。

虎徹くんに振り向いてもらえない私と、私に振り向いてもらえないレオと。

多分、私は、幸せになれないアナタを心のどこかで喜んでいた。寂しい私と同じ境遇の人に同情と愉悦と仲間意識を覚えて。

二人して虎徹くんを裏切ったのに、知らぬ顔で自分だけ幸せを見つけるなんて許せなかった。

傷つけてやりたいと、思ったの。

だからこれは私が招いた結果。
泣く権利なんてない。

それでも涙が頬を伝い落ちた。

だって歪な関係だったけど、一緒にいたもの。

本当の愛じゃなかったけれど情は確かにあったもの。






さよなら、レオ。

寂しい時に抱き締めてくれてアリガトウ。
でも、もう終わりにしましょうね。

私もアナタも色々な事を精算する時がきたんだわ。


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