恋愛の神様

  野山小鳥




※※※kotori noyama※※※




ワタクシはその日、控室の一室にいました。

ラジオをバックミュージック代りに、雑誌を捲りながら、オムスビを食べております。

まぁ、聞き様によってはとても優雅なお時間です。

『コレで魅力的な腰のラインをゲット!!』という眉唾ものの通販記事に夢中になっておりますと、扉が開きました。


「お疲れ様でした。」

たった今、ラジオの生放送を終えたハクトさんが戻ってきました。


この間穴を開けたラジオの生放送は、一週間。
今日が最終日でした。

司会の方もさぞやほっとしている事でしょう。

ハクトさん、無口です。
寡黙とは聞こえがよいですが、単なる口下手です。

クールなアーティスト、として売っておりますが、実情は単に『イイ歳なのに人見知りのしゃべり下手』です。

司会の方が必死になって水を向けますが『……まぁ』『……はぁ』『えーと……』の返事のみで、まるで会話が成り立っておりませんでした。
映像ならまだしもラジオでそれって……聞いているほうがヤキモキします。

逃走した日は『バニーb』のナンバーを掛けてやり過ごしたようですが、ある意味これならいない方が気楽だったのではないでしょうか。

それでも人気絶頂アーティスト。
公開収録のガラス越しにはファンの黒集りができておりました。

歌も然ることながら、その容姿。
甘いマスクに白髪、赤い目の幻想的なキャラ。

女の子の心を鷲掴みなのです。

まだ夕方も早い頃ですが、制服のオジョウサン達、学校大丈夫なんでしょうか。
電話やメールでのアクセスもパンク状態だったとか。

ともかくラジオ放送は成功を収めたようです。

< 221 / 353 >

この作品をシェア

pagetop