恋愛の神様

河瀬さんは達観したようなことを言ってはははと笑いました。
そのはにかむような笑顔も母性本能をくすぐり倒します。

野山特攻隊員、タダイマ行きます!

私はタイミングを図りに図って会話に滑り込みます。


「するとお家では奥様は食事のメニューに気を使って大変ですね。」

「ん?いや、独身貴族だからその点は大丈夫。」


ヤッタ!一人身!
好物件発見です!!


「自分でも作るけど、やっぱり一人だと面倒臭くて偏っちゃうね。美味しい料理を食べさせてくれるカワイイ奥さん絶賛募集中。」


今まさに!

まーさーにー!

野山小鳥、名乗りをあげさせていただきます!

ワタクシ、田舎育ちですのでヘルシー料理は得意分野です!今夜からでも田舎料理のフルコースでも――――


「か、河瀬さんがご要望とあらば、お造りします!私っ、私、こんな見た目ですが和食好きなんです!家事は好きだし、料理も得意なんですっ!」


ワタクシは一瞬固まりました。

ワタクシが言ったのかと思いましたが違います、よね………?

後ろを振り返ると、ウチの社員と思しき女性が途中の定食もそっちのけで腰を上げ、緊張の面持ちで震えておりました。
顔は真っ赤です。

齢ジャスト四十―――若い頃はそりゃモテタでしょうと思われる目鼻立ちのはっきりした大ぶりの美人です。

お局と言われる彼女は確かマーケティング課の根岸さん。

マーケティング課………。

ああ、なんだか嫌な予感がします。
強いて言えば、事務所の冷蔵庫に入れた牛肉からひしひしと。

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