恋愛の神様




物想いに耽りながら、受けた午後の授業。

放課後になった途端、いきなり携帯が鳴りだした。

相手は、シロのお守をしている筈のピーから。


「どうしたの?」

『たたた大変です!ハクトさんが脱走しましたぁぁぁ』


あの野良ウサギめ……

野良の性か、シロがふらりと姿を消すのは珍しくない。
最近はそれも滅多になくてすっかり飼い慣らされたかと安気でいたのに。

私は携帯からの訴えに耳を澄ませた。

どうやらレコーディングの休憩中、不意に消えたらしい。

消えたというか、衒いもなくトコトコ歩いて出て行ったらしいけど。


『シャトルバスに乗るのを確認しました。』

「…アイツ、どこに行くつもり……」

『えと…遊園地、みたいです。』

「で。アンタは何してんの?」


眉間の皺を揉みほぐしながら尋ねた。

返答如何ではネコの餌にしてやる。


『勿論、追っかけてますよ!バスには乗り損ねましたが、タクシー捕まえて追ってます!』

「よろしい。私も今から向かうから、アンタはそのまま追っかけて捕まえて頂戴。」

『ラジャー!』


軍隊ごっこなのかピーはそう勇ましく応えて、電話が切れた。

私は学校の前に着けていた車に乗り込み、沢蟹に遊園地に行く事を指示した。



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