恋愛の神様

  野山小鳥




※※※kotori noyama※※※




「タツキさーん」


園内をぐるぐる走りまわっていたワタクシは、タツキさんの到着に合わせて入場口へ向かいました。


「ったく…気を抜いて目を離すんじゃないわよ。」

「スミマセン。…って!タツキさんじゃあるまいし、ワタクシに飼い慣らせるわけがありません!!」


開口一番、叱責されて大いに顔を顰めます。


「ま、仕方ないわね。私ですらよく逃げられるんですもの。最近じゃ大人しくなったから私もうっかりしてたわ。」

「それなんですけど……」


ため息交じりのタツキさんをワタクシはそっと伺いました。


「タツキさんがマネージャーを辞めるって聞いたからだと思います。あっ、ワタクシが告げ口したわけではありませんよ!?スタッフさんの一人が知っていて、それで何気な世間話よろしくぺろっと話しちゃったみたいで……」


タツキさんが大きく目を見開きます。


やっぱりこのまま勝手に決めてイイわけないです。

ハクトさんだってタツキさんと離れる事に何も感じないワケないじゃないですか。

お互いとことん腹を割って話し合った方が絶対イイです。


いざ、そう一思いにぶちまけようとした途端、タツキさんはワタクシを猛ダッシュですり抜けました。


「ええ!?」


何事かと振り向けば、コーヒーカップの前をハクトさんがほてほてと歩いていました。

こそこそする様子もない有名人は、ウォーリーを探せのウォーリーくらい場違い極まりないその景色に塗れています。


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