恋愛の神様

聞き覚えのある声。

嘘。

何故!?

私は狼狽した。
勿論、顔なんてあげられない。

業とこんなところで泣いたんじゃない。
迷惑を掛けるつもりなら、最初からレストランで暴れてるわよ。

さっきは一言の言い訳もなく別れたくせに、何だって今更追いかけてくるのよ。

て、私は何だって最後だってのにこんな醜態を晒さなきゃならないの!?


固まったまま動かない私の頭に優しい手が置かれた。


「オマエ、俺の事好きだよな。」


刺されたトコロから血が溢れるように、その言葉に気持ちが溢れた。


虎徹クンが好き。

レオじゃない。

他の誰でもない。

私が寂しくないように構ってくれる人が好きなんじゃない。

言い訳一つしてくれない冷たい男でも――――

アナタじゃなきゃイヤなの。



「………き、好き……スキ………っ!」



「だったら、別れる事はないだろう。…………俺もオマエが好きだ。」


私は思わず顔を上げた。

化粧崩れはおろか、鼻水だって出てるような無様な顔で。

一点の曇りもないような平静なポーカーフェイスに、私は辛くなってクシャッと顔を歪めた。



「…………でも…っ!」

< 294 / 353 >

この作品をシェア

pagetop