恋愛の神様
「あのさ…頼むから少しぐらい言い訳させてくんない?」
部長の言うとおり俺は恰好付けで、こんな風に女に取り縋ったことなど、多分これが初めてだ。
「言い訳など………」
そう言って野山はぎゅっと唇を噛み締めた。
「……言い訳など、ワタクシには不要です。草賀さんがワタクシに言い訳をする事はございません。」
「アァ?何だってオマエはそーやって勝手に切り上げンだよっ!オマエがどーでもよくてもコッチには言いたい事があンだっつーの!」
「結構です。」
「結構じゃねーんだよっ!!」
噛み合わない会話に苛ついて思わず声が上がる。
話を切り上げて身を翻しかけた野山を反射的に掴む。
それに初めて野山が動揺したような顔を見せた。
「は、放して下さい。」
「……放してほしけりゃ放すけど……触られんのもイヤかよ。まぁ、避けられてンのは分かってるけど…」
さすがにこの反応はちょっと傷ついた。
俺の呟きに野山は弾かれたように顔を上げた。
「イヤだなどと………」
何かを訴えるような双眸で、喘ぐみたいに呟いた。
「嫌だなどと思った事は一度もありません。今だって草賀さんに触れられれば否も応もなくワタクシは喜んでしまいます。たとえ擦れ違うだけでもトキメキます……それだからワタクシは…だから尚更……」
誠実に紡がれる気持ちに正直ほっとした。
ヨカッタ。
まだ嫌われたわけじゃないんだな。
「だったら……」
「でも、ダメです!こんなの間違ってます。」
「何が……間違ってる?」