恋愛の神様
野山はさして関心なさそうに「ふーん」と言った。
何ダヨ、そのそっけない反応は。
言っとくけどこんな話は他でした事はないんだぞ?
そう。
こんな話したことはない。
花形営業とちやほやされて、一応出来る男の部類に入ってンのに、家庭の事情も捌けないなんて格好悪いだろ?
第一、話したところで「らしくない」と一笑されて終わるのがオチだろうし。
それを俺は何でこの女に話したかな。
それは多分、野山がチョロイから……だよな。
俺はまるで王様の耳はロバの耳と叫んだ穴のように、ただ吐き出すだけの場所が欲しかったのだ。
人の弱みに付け込むような相手ならいざ知らず、コイツなら万が一にも傷口に塩を塗りに来たところで簡単にやりこめることが出来るだろう。
だから安心して弱音が吐ける。
「いいんじゃないですか?というか、仕方ないと言うべきでしょうか。」
その言葉に思考から抜け出し、何だ?と顔を向ける。
「ワタクシ、人間関係は粘土創作だと思っております。」
ネンドソウサク?
ますます分からない方向に飛んだ話に眉を寄せる。
野山は前を向いたまま続けた。
「一つの粘土を二人で捏ねるんです。時には数人で。想像通りの形に纏まっていく時もありますが、相手によっては思わぬところにへこみを作られたり、でっぱりを作られたり……自分の不器用のお陰で歪になったりもします。それらを互いに直し合っていくんですよ。」
そこで言葉を途切った野山はきっぱりと言った。
「形が決まるのは、お互いがその粘土から手を引いた時、です。」