恋愛の神様
一課と言えば社内でもエリート中のエリートです。
いかにも出来る男という顔ぶれが、お菓子のオマケよりもチャチな事務課に無遠慮な視線を投げかけてきます。
生き地獄ーっ!
その地獄の最奥で、一人見知った顔が、ハトが豆鉄砲を食らったような顔で目を瞬いておりました。
アテレコするならば
『オマエはそんなトコロで何やってんだ?』
でしょう。
草賀さんです。
あんな濃密な時間を過ごした相手と次はどんな顔で再会したらよいかしらん………。
などと昭和初期の乙女モードで身悶えていた今朝が嘘のようです。
現在、ワタクシが目から発射するビームは『ヘルプ!』その一言に尽きます。
しかし、所詮ハトが食らったのは空砲だったようで、ふっと鼻先で笑うだけして知らん顔です。
得も言われぬ圧迫感によろめきつつ、ワタクシはプレゼンを始めました。
とはいえ、書類に沿って読み上げて行くだけです。朗読会だと思えばよいでしょう。
開き直って読み進めていましたが、数ページも行かない間に、横やりが入りました。
「この製品の回収見込みですが―――」
いきなりの質問にワタクシは戸惑いながら、記憶を浚い応えます。
「えと、えーと・・・P23の項目2に記載してあります。追って詳細の説明がありますが、今ご確認されたい方は各自お願い致します。」
パラパラと紙をめくる音が数件。
それを聞きながら、先ほどの続きに戻ります。
しかし、また少しも進まないうちに質問が繰り出されました。
…………にゃろう
ワタクシは内心で歯噛みしました。