恋愛の神様
例えば、お互いに意識しているのに先へ進まない、だとか、本来抜群のフィーリングなのにまるで意識していない間柄、だとか、仲互いしているけれどまだ別れる運命にない二人、だとか、そーいったところに切欠を与えるのが、この神様の力なのです。
そしてこれはあくまで推測なのですが、この力は現在、その瞬間にだけ有効なのです。
つまり、永遠の愛を約束するとかいう普遍性はありません。
だから、恋愛の神様の力で恋が実っても、その先で喧嘩別れしないとも限りません。
逆を言えば、喧嘩別れした後で、本当の運命を掴むかもしれないわけで、恋愛の神様の加護によって実った恋が枯れたからと言って二度と恋愛が成就しないと言うわけではないので、がっかりすることでもないのです。
過去の友人に連絡を付け調べ上げた結果、実にワタクシがきっかけで纏まったカップルの多いことか。
その中の何件かはめでたくゴールインしたのですが、そのうちのやはり数件は離婚したりもして、そのうちの更に数件は、再婚して愉しくやっているとの事です。
「逆に神の力でも纏まらない場合のお話ですが……。いい加減な想いは論外です。神様だってそんなに暇じゃあありませんもの。そして、深く想っていたとしても、どこかに歪が生じる場合、力は効果を発揮しません。」
「歪…………?」
「例えばAさんはBさんがスキ。しかしBさんはCさんがスキ、などと言う三角関係の場合。強引にAさんBさんを纏めようとすれば、Bさんの気持ちを蔑にする結果になりますもの。」
それでも神様は平等で、それぞれに切欠を与えてくれているのかもしれません。
それが劇的なゴールインとはいかないので、目に見えにくいのでしょう。
そして複雑に絡み合っている分、結果が出るのに時間がかかるのかもしれないですね。
草賀さんは何か考えている風で、珍しく静かに口を噤んでいました。
その表情におや?とワタクシは首を傾げます。