恋愛の神様

草賀さんがにやっと笑います。


「恋愛の神様威力喪失?」


ブームの寿命、実に短けり。
荒熱もすっかり冷め、今週に入ってはめっきり噂も沈静化したみたいです。

とは言え、未だ何を根拠にか、貢物をしてくるバカもいますが、それよりも寧ろ、先ほどの大馬鹿みたいに「デマだった!」と憤慨する者のなんと多いことか。

みんながみんな、その噂を心から信じていたわけではなかったはずですが、あわよくばで願った者は恋愛が成就しなかった八つ当たりにギャーギャー喚いているのでしょう。

ワタクシは、ゆるく頭を振りました。


「先ほどはああ言いましたが………ワタクシの力は本物ですよ。」


断言ともとれる物言いに、草賀さんはちょっと怪訝そうに眉を顰めました。


「……オマエ、宗教に目覚めたか?そのうち、宙が飛べるとか言いだすなよ?」

「草賀さんは一体、ワタクシをどう見積もってらっしゃるんでしょーね。生憎、ワタクシはそんな非現実な性質ではありませんよ。これは地道な観察と結果から導き出した結論です。」


ワタクシは眼鏡のブリッジを指で押し上げ、むんっと草賀さんを睨みました。


「確かに纏まる確率はおおよそ五分ですが。」

「五分、なぁ……。当たるも八卦当たらぬも八卦ってか。」

「いいえ、草賀さん。この場合、重要なのは纏まる確率なのです。おおよそ半数―――確実に恋愛が成就するということなんですよ。」

「ま、コイン投げりゃ、嫌でも裏か表が出るわなぁ。」

「相対確率と絶対確率の話ではありません。」


茶化されて憮然と口を尖らせます。


「神様とはいえ、万能ではありません。それなりのルールがあるんです。強引に相手を振り向かせて、瞬間接着剤でくっつけるようなあからさまな力ではありません。あくまでも切欠程度です。」


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