恋愛の神様

       犬飼亜子


※※※ako inukai※※※





好き。




好き過ぎて、時々、どうしていいか分からなくなる。

心に溢れるような想いだけで満ち足りる程物分かりがイイワケではなく、だからと言って傷つけてでもぶつかっていけるほど厚かましくはなれなくて―――。











不図肌寒さを感じて、私はベッドの中で目を覚ました。

時計を見ると、デジタルの時計が二時を示している。

ベッドの隣は空っぽだ。

私はシャツを羽織って、ベッドを抜け出した。

リビングを覗くと明かりが付いていて、パソコンとにらめっこのカレ。

その横顔を暫く見詰める。

じっと画面を見据える―――その頭の中で目まぐるしく思考が行き交っている。
取り憑かれたように、何かを考えている時の貌。

どこぞでは、カレの沈着冷静な態度を血も涙もない冷血無感と揶揄されているけど、まるで見当違い。

熱中すると我を忘れるくらいのめり込むタイプ。
明晰な頭脳をフル回転させ、全力で挑んでいく。
高温の炎が青白くみえるように、カレもまた、熱過ぎて逆に冷たく見えてしまうタイプなのだろう。


未だにそんな顔にトキメいてしまう。

そして最近では、少しだけ心がザワメク。


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