恋愛の神様

何の取り柄もないから勉強だけは小さい頃から頑張って、その甲斐あって一応才女で通っていたし、それなりに仲のよい友達はいたし、内弁慶なりにイイ雰囲気のボーイフレンドもいた。

同じサークルの先輩。

おおらかで気さくで、人付き合いが苦手な私でも直ぐに打ち解けられた。
告白はまだだったけど、お互い意識しているのは分かっていたし、後はほんの少しの切欠だけ―――そんな関係。

特筆すべきもないけど平穏な毎日。
それがずっと続くのが幸せな人生だと思っていたし、私の人生だと思っていた。


カレと会うまでは――――。











「小宮君。」


選択科目の教室へ行く途中、見知った顔を見つけて声を掛ける。


「教授が探してたわよ。レポートの提出締め切るぞ、て。」

「えっ、うわ、やば!忘れてた!犬飼サンキュー。」


慌てる同期をまったくもうと呆れ顔で眺めていて、不図、隣からの視線に気づいて顔を向ける。

最初は睨んでいるのかと思った程の無表情。
整った顔立ちをしていて、それだけにちょっと怖かった。

警戒したのに気付いたように小宮君が笑う。


「ああ。コイツ同期。知らね?二之宮虎徹っての。二之宮、こっちは―――」

「知ってる。犬飼亜子、だろ。」


何の感慨もなさげな淡々としたカレのセリフ。


「同じ科目を取っているから何度か教室で見かけてる。」

「え?………そうなの、ゴメンなさい。」

「何故、謝るんだ。」


いや、だってそれは……
相手が知っていたのにコッチは知らないなんてシツレイじゃない?
そりゃ、謝ることでもないかもしれないけど……。






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