君と奏でるノクターン
「あ~、そういうイメージ……確かにあるよな」


詩月はうんざりだとでも言いたげに、溜め息をつく。

ミヒャエルは席に着いて、しばらく経つがまだ何も注文していない。


ピアノが空くタイミングを話しながらも、伺っている。


「で、何を弾けばいいんだ?」


詩月は真顔で訊ねる。


「アヴェ·マリア……を聴いてみたい」


「ん、……一緒に弾くんだろ?」

詩月は澄まし顔で訊ねて、頬杖をつく。


「はあ?」


「メール、演奏どう?って送っただろ!?」


「即興で!?」


「弾けないのか? ……ヴァイオリン科首席って聞いてるけど」


詩月は上目遣いに、ミヒャエルを見つめ、口角を上げる。


ミヒャエルは舌打ちをし、詩月を睨み「わかった」とこたえる。


ピアノを弾いていた学生が、どうだった?という顔で席を立つ。
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