君と奏でるノクターン
ミヒャエルは詩月に気づくと、「詩月―っ」手を上げ、声を張り上げる。


――相変わらず暑苦しい奴

詩月は溜め息をつく。


「ミヒャエル、バイトか?」


「ああ、お前は?」


「管弦楽団の帰り」


「管弦楽団か~、正式な楽団員?」


「ジョルジュの紹介で。初演は第九、明日から練習に参加する」

詩月は顔色1つ変えずに言う。


「さらりと言ってのけるんだな。自信があるのか?」


「いや、精一杯弾くだけだ」

ミヒャエルが呆れたように、口笛を鳴らす。


「ったく、どういう心臓してるんだか」

ミヒャエルは言いながら、詩月の指を見る。


「指は大丈夫なのか? この間は紫色だった……」


「だ・か・ら。何度も……怪我をしてるとか、指の調子が悪いわけじゃないって」


「あれから、女子の噂を何度か聞いたし、画像や記事も見つけた」


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