君と奏でるノクターン
「ケルントナー通りの演奏を聴いて、それは認めるが街頭と舞台では……」


「心配には及ばない」


――これほど信頼されているのに


ミヒャエルは、気持ちの温度差を感じて虚しくなる。


「ましてや、2曲とも詩月の十八番だ。とくに『懐かしい土地の思い出』は、詩月の亡き師匠の十八番だった」


「ほお~」

カウンター席のアッシュグレーの髪をした男、マネジャー「ハインツ」は宗月の自慢気な顔にニヤリとし、珈琲を啜る。


「悠長に笑ってていいのか? 詩月は周桜宗月に銃口を向けているのに」

意地悪そうに言う。
宗月は身動ぎもせずに高々と笑う。


「確かに、あの目は宿敵に向けた目だ」


「……宗月」


「当日が楽しみだ」

ハインツは宗月の言葉に、宗月の思いを察し深く頷いた。
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